多義語(の意味)の処理には、一般的に三つの異なる説が存在する:①包括的アクセス説(exhausitive access)、②選択的アクセス説 (selective access)、および③使用頻度(frequency)・親密度(familiarity)説。
①Exhaustive Access
多義語の複数の意味が全て活性化され、その後、前後の文脈情報に基づいて、特定の意味に絞り込まれる。
②Selective Access
文脈から事前に多義語の意味の絞り込みを行っており、読み手の頭の中では特定の意味だけが活性化される
上記二つの説は、文脈が、語彙アクセス前(pre-lexical)か語彙アクセス後(post-lexical)のいずれのタイミングで機能するのか、という違いを反映している。
③Frequency/Familiarity
メンタルレキシコンからの語彙アクセス段階で、その語の(多義のうち)各々の意味の使用頻度や親密度などの情報、すなわち、多義語のどの意味に遭遇する確率が最も高いかに関する認識にもとづき、特定の一つの意味をすでに活性化している可能性が強い。前後のコンテクストとの照合の後で、他の意味を採用する必要がある場合に初めてその意味が意識される。
同一の使用頻度の意味を複数もつ多義語は実際には多くは存在しないこと、多義語の複数の意味の間には個人にとって親密度に差があることが多いことなどから、コンテクスト情報を参照する前に、多義語の語彙アクセスは達成されているが、複数の意味ではなく特定の意味に限定されて活性化されているという仮説が支持できる。
- 門田修平編 (2003). 『英語のメンタルレキシコン』. (pp.26-27).
- Duffy, S. A., R. K. Morris, and K. Rayner. (1988). Lexical ambiguity and fixation times in reading. Journal of Memory and Language, 27, 429-446.
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